ファスナーを最大限に引きあげて なにもできないんだぼくたちは
空爆の爆発音を聞くだれも入って こない自分の部屋で
お似合いの洋服を縫い付けられた うさぎのようなかなしみが湧く
ヤクルトをミニストローで飲む きみにマジな悩みは相談しない
教習のビデオで古いイケメンが 死角を目視し続けている
恋人と路上でキスをしていたら すぐに終わってしまう十代
きらめきの張り巡らされた空間に 絡まり宙ぶらりんの花びら
欠けている月はあなたと欲情の 季節があったことのメタファー
洋服を買わずに本を買うように ヤドカリが海に向かって歩く
人生の最後に口にするものが ブロッコリーでいいはずがない
いつか来る雪の日のため人参と ボタンとバケツを常備している
汚くて倒されたのか、倒されて 汚くなったのか、雪だるま
急停止すればあなたは抱き着いて くれるだろうが安全に漕ぐ
歌にして殺した空を飛んでいる 烏がなかなか着陸しない
雪を見に来たはずだったのに君が ジェスチャーだけで誘うラーメン
公園のこどもが雪にしゃがみ込み その白さには喋らずにいる
ブランコに積もった雪を払いつつ 鼻の奥にて熱が生まれる
ベランダに僕ら並んで雪を見る 飽きたら積もる雪を食べよう
貴方には記憶という名の海があり クマノミの住むとこが僕です
僕の吐く息とあなたの吐く息が 重なって、喰うようにして、宵
将来のことは将来決めるので 黙ってシャケを食べてください
僕のことなんて忘れて、忘れたら 僕だと思って紫陽花を見て
水道が熱く感じる数え日の クローゼットにしまわない服
太陽の存在しない部屋がいい 音もにおいも光もいらない
海中で手放してしまった少年の 手の感覚を覚えているか
被覆船の銅板を剥ぐため潜る ゴボゴボと息を泡へと変えて
逃げ切れた試しなどなく 今日もまた蜜の吸われた花の介抱
ダウナーな破壊衝動 石鹸がまくった腕の深くまで来る
だれだって悪者なのだと東京の 橙色の窓のいくつか
繰り返す怠惰を君は撫でながら ささやいてくれたように悲しい
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